ハレの場所「志の輔らくご in PARCO」

渋谷のど真ん中、PARCO劇場に足を踏み入れた瞬間、
胸の奥がふっと温かくなりました。
にぎやかな街の空気から一歩離れ、
ここだけはきちんと「正月」が用意されている。
その感覚に、まず安心します。
今年も立川志の輔さんの
「志の輔らくご in PARCO」を観に来ることができました。
それだけで、もう十分に縁起がいい。
観終えたあとに残ったのは、
強い高揚感ではなく、
静かで、あたたかい余韻でした。
初めての人にもやさしい「正月×PARCO×落語」
落語に詳しくなくても大丈夫です。
むしろ、この公演は「わかろう」としなくていいと思います。
志の輔さんも話していましたが、
新年は厳かに構えるものというより、
「初笑い」という日本の文化が、ちゃんとここにあります。

渋谷というハレの場所、
正月という区切りの時間、
そしてPARCO劇場という特別な箱。
そのすべてが重なって、
自然とこちらの背筋が伸び、
でも心はゆるんでいく。
お正月限定の出囃子が流れると、
「あ、今年もここから始めていいんだな」
そう思わせてくれます。
淡々と差し出される、話芸の頂点
ここ数年、志の輔さんの噺には
どこか人情の重みを感じます。
社会の不安や揺らぎを、
直接語るわけではない。
けれど、枕も噺も、
どこか現代と地続きで、
「心を締め直す」ような感覚が残る。
特に最後の一席。
余計な装置はなく、
シンプルな背景、黒い着物、
スポットライトに照らされる志の輔さんだけ。
その瞬間、
おばあさんにも、おじさんにも、
どんな人物にも見えてくる。
話芸の頂点とは、
こういうことなのだと思います。
後記 — 公演終了後の追記(2026)
※以下は、公演千秋楽後に追記しています。
演目および噺の内容に触れています。
志の輔らくご in PARCO 2026 演目
2026年の「志の輔らくご in PARCO」では、以下の三席が披露されました。
- ドドンガドン
- 踊るファックス
- 浜野矩随
終演は 16:46。
体感としては長さをほとんど感じさせない、密度の高い高座でした。

みんなでやる落語「ドドンガドン」
最初の「ドドンガドン」は、
会場全体を巻き込む一席。
盆踊りのように、
「みんなでやる」空気が自然と立ち上がっていきます。
まさかヴィヴァルディが音頭になるとは思いませんでしたし、
イエローサブマリン音頭まで飛び出す展開には、理屈抜きで笑ってしまいました。
志の輔さんが、
「オチの甘さは最終日にはよくなる」と語っていたのも印象的で、
一か月公演を“育てていく”感覚が、そのまま高座に現れていました。
時事と可笑しさの距離感「踊るファックス」
続く「踊るファックス」では、
演目後に舞台上に大きなFAXが現れます。
現政権のスローガンを思わせるフレーズを下敷きにしながら、
あくまで直接的になりすぎない距離感で、今の社会の空気を笑いに変えていく。
強く批判するわけでも、単なる風刺で終わるわけでもない。
「ああ、そういう感じ、あるよね」
と観客が頷ける温度で差し出されるのが、志の輔さんらしいところだと思いました。
ここまでで、お仲入り前。
すでに1時間を少し超える高座でした。
人情の核心へ「浜野矩随」
お仲入り後の「浜野矩随」は、この日の核となる一席でした。
ここ数年、人情噺が続いているのは、
社会に不安が多い時代だからなのかもしれません。
努力や忍耐、歯を食いしばること。
決して楽ではない生き方を、叱咤でも根性論でもなく、
淡々と差し出してくる。
そこにあるのは、
慈眼ある仏のような視線。
「こうしろ」と言わない代わりに、
「立ち戻る場所」を示される感覚がありました。
背景はシンプル。
黒い着物に身を包んだ、志の輔さんだけが照らされる。
その顔は、
おばあさんにも、おじさんにも、どんな人にも見えてくる。
話芸の頂点とは、
こういう瞬間のことを言うのだと思います。
正月に、気持ちを締めなおす
笑って、少し考えて、
最後は静かに背筋が伸びる。
社会情勢を憂いながらも、
答えを押し付けず、
それぞれが自分の場所に戻っていけるように、そっと差し出される落語。
観終えたあと、
自分の気持ちを締めなおしたような感覚になりました。
正月に、
こういう時間を持てたこと自体が、もう十分に縁起がいい。
正月PARCOならではの楽しみ(グッズと展示)
観劇だけで終わらないのも、
この公演の楽しさです。
今年も手拭いを購入しました。
毎年集めているのですが、2026年は二種。

- 芸歴44周年を、44本の「にんじん」で表したデザイン
- 志の輔さん直筆による「一粒万倍」

どちらも、使うたびに
正月の記憶が立ち上がります。
今年は後厄ということもあり、
初めて招き猫も購入しました。
おみくじは中吉で、少し辛口。

でも、袋を開けた瞬間に広がる
枡の木の香りが、妙にうれしかった。
会場に展示されていた午年の馬の造形も印象的でした。
正直、最初は驚きましたが、
「これは縁起がいいな」と、
思わず写真を撮ってしまいました。
「ああ、正月だな」と思えた
観終えたあと、
胸が温かく、静かで、
今年もまたここに来れて良かったと、
心の底から思いました。
そして自然に、
来年もまたここに戻ってきたいと思う。

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分かったつもりで、止まっていませんか。


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