#11 譜面台とわたし

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わたしは読書をしない。

知識をつけた方が良いとか、教養を身につけた方が良いだとか。

そのために本を読めと“他人(ひと)”は言う。

そんなもの、本が嫌いな人間が読んだって意味がない。

わたしは文字を読みたくたい。

まったく頭に入らないし、何も浮かんでこない。

わたしの人生に読書は必要のないものだ。

譜面台に楽譜を載せる。

音符は違う。

文字とはまったく違う。

作曲家が書いたメロディーが物語のように情景を浮かび上がらせる。

そのメロディーに描かれた世界に入り込みうっとりとする。

わたしはブラームスやベートーヴェンたちが残した物語を奏でる。

彼らは時に寡黙、時に雄弁に語る。

わたしは譜面に耳を傾け、演奏で想いを伝える。

今日は大晦日だ。

今年はどんな年だった?

喜びも悲しみも、出会いも別れもたくさんあった。

一年の締めくくりにはあの曲しかない。

この小さな部屋から歓喜の歌を。

そしてまた明日から新しい一年が流れる。

譜面台とわたし

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