立川のPLAY! MUSEUMで開催されている「安野光雅展」に行ってきました。
会場に入ってすぐ、あの『旅の絵本』の風景が、壁いっぱいに広がっていました。
気づけば、歩く速度がゆっくりになっていました。
息も、少しだけ深くなっていたように思います。
イギリスの街の中に、さりげなく描かれたビートルズ。
プロジェクターに映し出される絵本と、静かに流れる朗読の時間。
そして、原画の前でふと足が止まる、水彩のやわらかさ。
懐かしさと、はじめて見るような驚きが、同時にやってくる。
そんな時間でした。
『旅の絵本』の中に入るような感覚がありました
展示室に入ると、楕円形の空間いっぱいに『旅の絵本』の風景が広がっていました。
壁に沿って歩いていくと、自分がその街の中に入り込んだような感覚がありました。

遠くから眺めるのではなく、近くを歩きながら見つけていく。
その中で、ふと目に入ったのが、イギリスの街に紛れて描かれたビートルズでした。

よく知っているはずの絵なのに、見つけるたびに少しうれしくなる。
そういう小さな発見が、静かに続いていきます。
歩く速度が自然とゆるみ、
ひとつひとつの景色を、確かめるように進んでいました。
朗読とともに、時間がゆるむ展示でした
会場では、絵本をプロジェクターで映しながら朗読する展示もありました。
椅子に座って、ただその時間を過ごしていると、
ページをめくるように、ゆっくりと場面が移り変わっていきます。
声と絵が重なることで、
自分で読んでいるときとは少し違う距離で物語に触れている感覚がありました。
急ぐ必要のない時間の中で、
ただそこにいる、という感覚が残っていました。
原画の前で足が止まる、水彩のやわらかさ
展示されている作品の前では、自然と足が止まりました。

草花や風景の描写は、細かく描き込まれているのに、
どこか軽やかで、やわらかさが残っています。
本で見ていたはずの絵でも、
実際の原画には、にじみや色の重なりがあって、少し印象が変わりました。
見ようとするというより、
しばらくその場に立ってしまうような感覚でした。
安野光雅展の見どころ(体験型展示まとめ)

今回の展示は、ただ作品を見るだけでなく、体験として楽しめる構成になっていました。
- 『旅の絵本』の世界を再現した大空間展示
- 『天動説の絵本』の朗読付き映像
- 約130点の原画展示
- 絵本を実際に手に取って読めるコーナー
- フォトスポットなどの体験要素
それぞれが強く主張するというより、
ゆるやかにつながりながら、ひとつの空間をつくっている印象でした。
懐かしさと、はじめての驚きが同時にありました
『旅の絵本』は、実家にあった記憶があります。
何度も見たはずなのに、
こうして空間の中で出会うと、少し違って見えました。
懐かしいはずの風景の中に、
まだ見つけていなかったものが残っている。
そんな感覚がありました。
帰りに、図録を一冊買いました。
理由をうまく言葉にはできませんが、
もう少し、この時間を持ち帰りたかったのかもしれません。

静かな時間を持ち帰るような展示でした
強く印象に残るというより、
気づいたら、自分の中に残っている。

そんな展示でした。
立川のPLAY! MUSEUMで開催されている「安野光雅展」は、
少し立ち止まるような時間を過ごしたいときに、ちょうどいい場所かもしれません。
展示の詳細は公式サイトから確認できます。
気になった方は、静かな時間を過ごしに足を運んでみてもいいかもしれません。
展覧会情報
展覧会名
生誕100周年記念 安野光雅展
開催期間
2026年3月4日(水)ー 5月10日(日)*会期中無休
開館時間
10:00-17:00(土日祝は18:00まで/入場は閉館の30分前まで)
休館日
原則無休(展示の入替、年末年始をのぞく)
会場
PLAY! MUSEUM(プレイミュージアム)
Webサイト
https://play2020.jp/article/anno/
図録も、絵本のような一冊でした

この図録は、展覧会場限定で販売されている公式図録で、A4変型・208ページの一冊。一般の書店やオンラインショップでは販売されていないようです。
中には、『ふしぎなえ』『旅の絵本』『おおきな ものの すきな おうさま』『天動説の絵本』など、今回の展示に並んでいた作品の図版や解説が収録されています。約130点の原画を含む展示作品を振り返ることができる内容になっていました。
ただ、開いてみて印象に残ったのは、情報量の多さというよりも、本そのもののつくりでした。
文章は控えめで、絵をじっくり楽しめるようなシンプルな構成になっていて、図録というより、もう一冊の絵本を手にしているような感覚がありました。
ページの中には窓のように空いている部分もあり、向こう側の絵が少し見えるようになっています。
ただ記録として作品を見るのではなく、ページをめくりながら、自分の目で見つけていく。
その感じが、会場で『旅の絵本』の世界を歩いていた時間と、どこかつながっていました。
それから、個人的に面白かったのが背表紙です。
本棚に置いたとき、少しだけ逆さまの世界がそこにあるように見えて、安野光雅さんの絵本にある不思議な視点のずれを、そのまま本の姿に残しているようでした。

巻末には、安野光雅さんから影響を受けた6組のクリエイター、安野モヨコさん、片桐仁さん、ナカムラクニオさん、tupera tuperaさん、きくちちきさん、辻川幸一郎さんへのインタビュー「先生へ」も収められています。
そのほか、キュレーター・林綾野さんによるエッセイ「優しさの秘密」や、安野光雅さんの略年譜、作品リストも掲載されていて、展示の余韻をもう少し深くたどれる内容になっていました。
展覧会で感じた静かな時間を、もう少しだけ持ち帰りたくて買った図録でしたが、実際に手に取ってみると、これはこれでひとつの小さな展示のようでした。
ふとしたときに開くと、また安野光雅さんの空想の世界へ入っていける。
そんな一冊でした。
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