テート美術館展「YBA & BEYOND」を国立新美術館で見てきた|コンセプトの時代に、身体の絵を見る

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国立新美術館で開催されている「テート美術館展 YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」を見てきた。

90年代の英国アートを象徴するYBA(Young British Artists)。
コンセプトを前面に押し出した作品が並ぶこの時代の空気を、いつか実際に体感してみたいと思っていた。

そしてもう一つの目的が、フランシス・ベーコンの絵だった。

会場に入ると、最初に現れるのがその三幅対。
いきなりピークに来てしまったような、そんな感覚も少しある。

そこから展示を進んでいくと、YBAの作品が続く。
社会や文化、政治、音楽──さまざまな文脈を背景にしたコンセプトの強い作品たちだ。

刺激的で面白い。
けれど、たくさん見ていると、どこか思考のゲームのようにも感じてくる。

そんな展示を歩きながら、最初に見たベーコンの絵を思い出していた。

コンセプトよりも、感覚。
思想よりも、存在。

90年代の芸術を歩きながら、
あらためて「身体の絵」について考える時間になった。

目次

入口でいきなりフランシス・ベーコン

《1944年のトリプティク(三幅対)の第2バージョン》
フランシス・ベーコン

会場に入ると、すぐにフランシス・ベーコンの《1944年のトリプティク(三幅対)の第2バージョン》が展示されている。

正直に言えば、ここでかなり満足してしまった。
「もう今日のハイライトでは?」と思ってしまうくらいの存在感だった。

実物を見てまず感じたのは、思っていたよりも絵具が厚くないことだった。
近づくと、キャンバスの布地がそのまま見える部分もある。

写真や画集で見ていたときは、もっと重たい絵だと思っていた。
けれど実際は、むしろ生々しい。

そこに描かれているのは、コンセプトというよりも、肉体の痕跡のようなものだった。

YBAという「コンセプトの時代」

その後の展示では、YBAの作品が続いていく。

YBA(Young British Artists)は1990年代の英国アートを象徴する動きで、ダミアン・ハーストをはじめとするアーティストたちが、社会や文化、政治、メディアなどをテーマにした作品を発表してきた。

展示を歩いていると、アイデアや文脈の面白さが次々に現れる。

たとえば

  • ダミアン・ハースト《後天的な回避不能》
  • コーネリア・パーカー《コールド・ダーク・マター:爆発の分解イメージ》
  • クリス・オフィリ《ユニオン・ブラック》

どの作品もコンセプトがはっきりしていて、社会や文化の背景を読み取る面白さがある。

ただ、それらがたくさん並ぶと、少し不思議な感覚にもなる。

作品を見るというより、
「考察を求められている」ような感覚。

あるいは、誰が一番鋭く社会を切り取れるかという
思考のゲームのようにも見えてくる。

もちろん、それ自体がこの時代の面白さなのだと思う。

印象に残った作品たち

展示の中で、いくつか印象に残った作品がある。

コーネリア・パーカー《コールド・ダーク・マター:爆発の分解イメージ》は、
爆発した物体の破片を空間に吊るすことで、爆発の瞬間を立体的に表現している作品。

静止しているはずなのに、どこか時間が止まったような感覚がある。

クリス・オフィリ《ユニオン・ブラック》は、
アフリカとイギリスの歴史や関係性を象徴する作品で、コンセプトもわかりやすい。

また、シール・フロイヤー《モノクロームのレシート(白)》は、
実際のレシートを使った作品で、美術館近くのコンビニのレシートが使われているという話も面白かった。

《モノクロームのレシート(白)》
シール・フロイヤー

エリザベス・ライトの、自転車を135%に拡大した作品も印象に残った。

《B.S.A.社製のレーサータイプ自転車「ツアー・オブ・ブリテン」を135%のサイズに拡大したもの》
エリザベス・ライト

ほんの少し大きくしただけなのに、実際に見るとかなり違和感がある。
身体の感覚が微妙にズレる、不思議な体験だった。

また、THE FACE誌の展示は、
oasis、NIRVANA、Kate Moss、Blurなど、90年代の文化そのものを見ているようで面白かった。

コンセプトと身体のあいだで

こうして展示を歩いていると、YBAがまさに

コンセプト > 造形

の時代だったことがよくわかる。

アイデアや文脈が作品の中心にあり、
造形はそのための手段として使われている。

だから展示として並ぶと、どこか「思考の競争」のようにも見えてくる。
そのなかで、最初に見たフランシス・ベーコンの絵を思い出す。

ベーコンの絵には、コンセプトよりも感覚がある。

理論より肉体。
思想より存在。

だからこそ、YBAの展示の中で見ると、
その身体性が強烈に浮かび上がるようにも感じた。

展覧会情報

展覧会名
テート美術館 YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート

開催期間
2026年2月11日(水・祝)~2026年5月11日(月)

開館時間
10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで

休館日
毎週火曜日
※5月5日(火・祝)は開館

会場
国立新美術館 企画展示室2E

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