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短編絵画
#15 暮らしの音
日曜日は音楽をかけない。 外の世界は私を私以上にさせようと催促するようだ。 私は静寂に包まれながら、作り置きのおかずを料理する。カボチャの皮は厚く硬い。 包丁がまな板に落ちる音。キシキシと唸るカボチャ。コンロの熱気。台所の匂い。 暮らしの音... -
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#14 余計なこと、しないで欲しい
「いやだから、もう余計なことしないでって!」 あぁーーーーーもう本っ当にイライラする。なぜ世の中はこんなに複雑になったの? この前だってそう。パソコンのデータ移行も書いてある通りにやったのに、どうして最後にエラーになるの?! 誰の都合だか知... -
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#13 3C-スパイシーカレーと土曜日-
冬晴れの気持ちの良い日だ。こんな日は仕事のことは忘れて自分の時間に没頭したい。 もっぱら最近はご時世柄、家で過ごす時間が増えた。人に会うことは減ったが新しい趣味ができた。こうして個人の生活もどんどん多様化していくのだろう。 しかし昨夜読ん... -
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#12 箱詰めみかん
『ありがとうございましたー!』 ガチャン。 宅配のお兄さんが階段を降りた音を確認してから玄関の鍵を閉める。 「重いな。」 ダンボールの中はみかん。所狭しと詰め込まれたみかんだ。 木の上で実った果実たちはこんな風に詰め込まれるとは思ってもみなか... -
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#11 譜面台とわたし
わたしは読書をしない。 知識をつけた方が良いとか、教養を身につけた方が良いだとか。 そのために本を読めと“他人(ひと)”は言う。 そんなもの、本が嫌いな人間が読んだって意味がない。 わたしは文字を読みたくたい。 まったく頭に入らないし、何も浮か... -
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#10 ブロッコリーと母
ブロッコリーを茹でる瞬間が好きだ。沸騰した鍋に入れた瞬間、ブロッコリーが鮮やかな緑色に変わるのがたまらない。 私はブロッコリーの茎も食べられることを知ったのは家を出てからだ。帰省した時にその話をすると「私は適当だから」と母は言った。 実家... -
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#9 低気圧と晴れた次の日
いったい、年に何度この日がくるのか? 頭が重い、瞼(まぶた)が重い。怠い、首が重い。 眠い、眠い、眠い、眠い、眠い、眠い、いくらでも寝れる。 天気アプリを開かなくても分かる、今日はあの日だ。 この世には2種類の人間がいる、「天気に左右される人... -
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#8 朝風呂、休日にて
『11月26日は語呂合わせで「いい風呂の日」です!みなさん今夜はゆっくりと〜』もう習慣になった朝のラジオでは毎年来るこの日を通過儀礼のように紹介する。 (今夜じゃない、朝なんだ。) ここのところ休日の朝風呂が楽しみになっている。お風呂場につけ... -
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#7 椎茸にまつわる話
『これは必見!実は椎茸を冷凍すると・・・!?』 『目から鱗、買った椎茸はすぐに・・・!?』 ふふふ、もう知ってるわよ。 あぁ、この香りがダメな人がいるのは分かっている。 でもそういう意味では私は勝ち組よね。 だってこの芳醇な香り、鼻から抜けて... -
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#6 真夜中のギター
「ゆーえー?ゆーあ?これなんて読むの?」 UAのファーストシングルを手に持つ私。あの頃はまだ短冊型の8㎝のシングルCDであった。 私はリード曲の"甘い運命"よりもカップリングの"真夜中のギター"が好きだった。この曲が千賀かほるさんのカバーソングであ... -
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#5 やかんと麦茶
これぞ日本人のDNAなのか?そう思わされることが何度かある。 縁もゆかりもない田舎の田園風景を懐かしんだり、藺草(いぐさ)の香りする畳。現代の私たちからは遠のいていくものばかりだ。しかしなぜか我々は過去に経験してもいないそれらを簡単に親しん... -
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#4 ペーパードリップ珈琲
『ふん♪ ふふふ〜ん♫ ふ♪ ふふ〜ふ〜ん♪』 ガラガラガラ ゴリゴリ ズズズズ キュッ キュル キュッ ミルにも慣れてきた。どのくらい調整したら中細挽き〜中挽きになるか分かってきた。 はじめはアウトドア専用のミルだったせいか上手く調整ができなかった。...
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