三菱一号館美術館で開催中の『ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠』展へ。
本展示は、いくつかの作品で写真撮影が許可されていました。ただ、あえてカメラを出さないことにしました。
理由はとても感覚的なものです。
写真にした瞬間、その体験が過去になってしまう気がした。
それよりも、絵画と向き合う時間の中に静かに佇んでいたかったのです。
心に刺さったルノワールの言葉
ルノワールの言葉が忘れられません。
※展示会場で紹介された言葉とは翻訳が異なります
「我々の運動(印象派)で最も重要なことは、絵画を主題の重みから解放したことである。私は花をただ花と呼んで描く自由を得たのであり、そこに何かを物語らせる必要はないのだ」
“What seems most significant to me about our movement [Impressionism] is that we have freed painting from the importance of the subject. I am at liberty to paint flowers and call them flowers, without their needing to tell a story.”
これは、印象派の本質を端的に語ったもの。
ルノワールにとって絵画とは、意味や物語を語るものではなく、“今ここ”を描く感覚そのものだったのだと思います。
私はこの言葉に出会って初めて、今回一番印象に残ったルノワールの《桟敷席の花束》を「言葉」ではなく「余韻」で捉え直せた気がします。
《桟敷席の花束》──色彩の喜びから、感傷へ
ルノワールといえば、色彩の豊かさや光のあふれる描写が印象的ですが、この作品は少し違っていました。
色数は控えめで、どこか感傷的。
それでも、静物画としての花々は、まさに「ただ花として」存在していたように思います。
何かを象徴していないからこそ、心に残る──そんな絵でした。
セザンヌの「りんご」に触れる、構成と永遠
セザンヌの作品には数多くの「りんご」が並びます。
彼の言葉「りんごでパリを驚かせたい」に象徴されるように、彼の作品には構成への強いこだわりがあります。
「りんご」という日常的なモチーフに、永遠の構造美を見出そうとしたセザンヌ。
その静けさは、ルノワールの「感性」とは真逆で、静謐な知性の結晶のように感じました。
展示の終盤では、ピカソの作品と並べて紹介されていて、「近代絵画の父」と呼ばれるセザンヌの影響力が可視化されていました。
ルノワールの自由、セザンヌの構成──静かに“モダン”を感じる展示
この展示会は、一人でも誰かとでも、ふらりと訪れて心を豊かにしてくれる空間です。
展示の章立てもわかりやすく、動線にもゆとりがあるので、混雑していても落ち着いて鑑賞できます。
そしてなにより、ルノワールの精神に出会えたこと。
「私は花を花として描く自由を手に入れた」
それは、意味を手放して、自分の感性を大切にしていいんだという、静かな肯定でもありました。

展覧会情報
展覧会名
オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠
開催期間
2025年5月29日(木)~9月7日(日)
開館時間
10:00-18:00
(祝日を除く金曜日と第2水曜日、9月1日~9月7日は20時まで)
【夏の特別夜間開館】8月の毎週土曜日も20時まで開館します。
※入館は閉館の30分前まで
休館日
月曜日
但し、祝日の場合、トークフリーデー[6月30日、7月28日、8月25日]、9月1日は開館
会場
三菱一号館美術館
Webサイト
https://mimt.jp/ex/renoir-cezanne/
「カラーコーデ割引」のちょっと嬉しい偶然
実は今回、美術館のユニークな取り組みである「カラーコーデ割引」が適用されました。
ピンク or ブルーの服装で100円引き、両方を取り入れれば200円引きという制度。たまたまブルーのコーディネートだったのですが、窓口で割引になってびっくり。
他にもピンク&ブルーの方も見かけて、「知っている人も多いんだな」と密かに嬉しくなりました。
この遊び心も、三菱一号館美術館らしいおもてなしだと感じます。


















