チェコの風が吹く美術館で─「出久根育展 チェコからの風 静寂のあと、光のあさ」を巡る感動の旅

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武蔵野市立吉祥寺美術館で開催されている「出久根育展 チェコからの風 静寂のあと、光のあさ」に行ってきました。今回はその展覧会の感想や見どころ、トークショーの内容を元に、出久根育さんの素晴らしい世界に触れてみたいと思います。

目次

展覧会概要「出久根育さんの芸術的な旅」

わたしはしっているの

展覧会のメインビジュアル《わたしはしっているの》は、出久根さんが新しい絵本『もりのあさ』につながる世界を描いたものです。静謐な空気や匂いが伝わる作品で、サブタイトル「静寂のあと、光のあさ」がそのまま具現化されていました。展示された約200点の作品を通して、30年にわたり描き続けた出久根さんの魅力が存分に感じられる展覧会でした。

ちなみにトークショーで明かしていたのですが、このメインビジュアルの切り抜きはデザイナーさんが「出久根さんの脳と心臓」をイメージした形にしたそうです。出久根さんの頭の中と気持ちを表現した面白い発想ですよね。

展覧会の見どころ

展覧会では、注目すべき作品や見どころがたくさんありました。まず、新たな季節を迎える絵本作家としての新しいステージを描いた作品が多く展示されています。グリム童話の挿絵原画や初期の銅版画、児童文学作家とのコラボレーションによる挿絵原画など、彼女の制作活動の途中経過が垣間見られる展示が印象的でした。
展示会場は一部の作品を除き撮影禁止のため、ぜひ会場に行き原画を見ていただきたいです!

1. 新たな季節を迎えて/絵本作家としての出発点

展覧会では、出久根さんのデビューから20年以上の歩みが感じられます。初期の銅版画はダークファンタジーのようでした。またテンペラやガッシュに画材を変えてから、子供たちの顔の描き分けや笑顔と暗い表情の美しさは圧巻でした。特に「マーシャと白い鳥」の絵の発色の良さは素晴らしく、赤の世界に心を奪われました。

2. 中東欧の民話の世界

命の水 チェコの民話集

出久根さんの代名詞ともいえる『マーシャと白い鳥』。チェコの自然が画面に息づき、大自然が持つ生命の“赤”が印象的でした。展覧会での特集では、油彩を用いた絵画が印象的で、チェコの民話の世界に引き込まれました。

3. チェコと日本がつながるとき

出久根育のチェコの紙あそび

出久根さんと児童文学作家・わたりむつことのコラボで生まれた「こうさぎ」シリーズ。チェコの文化や自然の美しさが詰まった作品で、展覧会外にあった「命の水 チェコ民話集」や「チェコの紙あそび」も素敵でした。展示された絵画は、出久根さんが30年以上かけて辿り着いた現在の魅力を感じさせます。

展覧会を歩きながら感じたこと

出久根さんの作品から受けた感動は言葉に表せないほど深く、彼女の芸術的な世界に引き込まれました。

まず美術館に着くと、会場前に「ぼくのサビンカ」の原画や猫のスケッチが飾られていました。とっても可愛くて素敵でした。

「ぼくのサビンカ」ねこのしゅうかい

初期の銅版画は、まさにダークファンタジーのような雰囲気を醸し出していました。彼女の制作の背後には、深い想像力と芸術的な冒険が感じられ、見る者を引き込んでいきました。

また子供たちの顔の描き分け方や笑顔と暗い表情の対比が素晴らしく、その表現力に心を打たれました。出久根さんが描く子供たちのキャラクターは、リアルでありながらもファンタジックで愛らしい印象を与えます。

「マーシャと白い鳥」の絵の発色の良さには感嘆の声が漏れました。赤の世界に取り憑かれたような、美しい幻想的な風景が心に残りました。「もりのあさ」の濃いブルーの世界も素晴らしく、出久根さんの色彩感覚と世界観に圧倒されました。

そして「こうさぎ」シリーズの特に夏と秋は黄金色に輝いているようでした。季節を感じることは「癒し」だと思いました。

「こうさぎとほしのどうくつ」「こうさぎとおちばおくりのうた」を購入

出久根育のトークショー「絵本画家としての現在」

幸運にもトークショーに参加できました!

出久根さんは非常に優しく、おおらかでピュアな人柄が作品に表れていました。その温かさが、展示された作品の一つ一つに込められた思いと共鳴しました。

出久根育さんのトークショーでは、彼女の人生やアートに対する深い洞察が明かされ、その言葉には心を打たれるものがありました。美大時代から抱えていた劣等感やアートへの疑問について聞くことができ、その葛藤に共感しました。作者自身が絵本作家としての方向性を見つけるまでの苦悩は、作品に込められた意味をより深く理解できるかと思います。

「かえでの葉っぱ」で自然に向き合うことを思った出久根さんのお話は感動的で、その後の制作にどれだけの影響を与えたのかが垣間見えました。

五感の記憶を大切にし、日常の美しいものを描く姿勢には深い哲学が込められています。出久根さんの言葉から、日常の中に潜む美しさを見つけ、それを芸術に昇華するプロセスがうかがえました。

最も印象的だったのは、「綺麗と美しい」の違いについての洞察でした。彼女が「綺麗」が心の栄養になる一方で、「美しい」はその中にあるものを探し、それに感動することが生きる喜びにつながると語った言葉は、日常の中の美しさに新たな価値を見出すきっかけとなりました。

色探しの旅

本展の図録(サインもらっちゃいました)

出久根育さんの芸術世界に触れ、彼女の人生や創作に対する情熱を感じることができました。展覧会はまさに彼女の芸術的な旅の一端を垣間見る素晴らしい機会であり、その美しい作品に心から感謝しています。

出久根育さんの作品からは、美しさや幸福が溢れ、彼女の芸術的な旅に共感することができました。美術館でのひと時が、日常にも新たな彩りを添えてくれるはずです。

展覧会情報

展覧会名
出久根育展 チェコからの風 静寂のあと、光のあさ

開催期間
2024年1月20日(土)~3月3日(日)

開館時間
10時00分~19時30分

休館日
1月31日(水)/2月21日(水)・28日(水)

会場
武蔵野市立吉祥寺美術館

Webサイト
https://www.musashino.or.jp/museum/1002006/1003349/1005926.html

武蔵野市立吉祥寺美術館

武蔵野市立吉祥寺美術館

武蔵野市立吉祥寺美術館は、2002年2月に開館した美術館で、吉祥寺の街中に位置し、日常生活と文化・芸術を結び親しむ場として開館されました。

吉祥寺サンロード商店街

JR吉祥寺駅からもすぐ近く、吉祥寺サンロード商店街を入ってすぐの商業ビルの7Fにあります。

武蔵野市立吉祥寺美術館

ジュンク堂が6階と7階にあり出久根さんの作品も置いてありました。
入場料も比較的に安く、フラッと芸術鑑賞したいときにおすすめです!

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Tomorebiは、Tomo + Komorebi(木漏れ日)から生まれた言葉です。
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