静かな朝の光の中、東京オペラシティ アートギャラリーの入口に立った。
「柚木沙弥郎 永遠のいま」。
その文字の下に広がる黒と生成りの模様は、どこか呼吸しているようだった。
平日の開場直後にも関わらず、すでに多くの人が集まっていた。
それでも会場は不思議な静けさに包まれていて、布の温度と人々の息づかいがゆるやかに溶け合っていた。
暮らしと命のアート
展示の中で流れていた映像で、柚木さんはこう語っていた。
「ネガティブな時代に流されない心の余裕、それこそが生きる力なんです。」
3.11、そしてコロナ禍を経て──
柚木沙弥郎という“民藝”の作家は、単なる伝統の継承者ではなく、
“いま”を生きるアーティストとして、暮らしの中に希望を見出す人だと感じた。
布に染められた模様たちは、どれも命のようにリズミカルだった。
抽象でも具象でもなく、ただ生命のリズムそのもの。
色彩が呼吸をしているように、見る人の内側の“生きる力”を静かに呼び起こす。

自然を“借りる”ということ
「自然の形を借りた模様」。
柚木さんの言葉にある“借りた”という表現に、深い敬意を感じた。
自分のために奪うのではなく、自然の美を一瞬だけ借りる。
そして、そこに自分の“ワクワク”を重ねて表現する。
それはまるで、自然と人のあいだで交わされる対話のようだった。
「自分らしさ」を出そうとするよりも、
“自然の流れに身を委ねること”こそが創造なのだと、
その作品たちが語りかけていた。
布と手仕事が語る「時間」
会場では、女子美術大学の学生が型染めを行う映像が流れていた。
ひとつの布が染め上がるまでの長い時間、
その手の動きの中に、確かに「暮らし」という命が流れていた。
機械では作れない不均一さ。
手の温度が残る線。
それらが「人の営みの豊かさ」を形づくっていた。
柚木さんが“民藝”に惹かれた理由が、少しだけ分かった気がした。
それは「作品」ではなく「生き方」なのだ。
「永遠のいま」ということ
『今日も明日は昨日になる。毎日がね、新しい今日なんだよ。』
この言葉を読んだとき、胸の奥があたたかくなった。
“永遠”とは時間の果てにあるものではなく、
“いま”という瞬間を生きることの中にある。

過去も未来もすべてが流れていく。
でも、今この瞬間を一生懸命に生きることで、
その「いま」は永遠になる。
──それが、柚木さんの言う「永遠のいま」なのだと思う。
【余談:自然の中で見つけた“命の呼吸”】
展覧会をあとにして、私は自然の中へ足を向けた。
青い空、光を透かす葉、根を張る大木、苔むした倒木。
止まって見えるものほど、いちばん動いている。





カメラを向けると、そこに確かに“命の呼吸”があった。
柚木さんが布に映した生命のリズムは、
森の中にも、街の中にも、そして私たちの暮らしの中にも、
絶えず流れている。
「永遠のいま」は、きっとどこにでもある。
それを見つけるまなざしを持つことが、
生きるというアートなのかもしれない。
「生命力」という言葉の本当の意味を感じた

生かされているという感覚。
どんな時代にあっても、美しいと感じる心を忘れないこと。
柚木さんの作品は、そんな“命のワクワク”を思い出させてくれる。
私自身も、絵を描くことやコーチングという対話を通して、
この生命の流れを伝えていきたい。
生きることが、創造になる。
それが「永遠のいま」に触れた一日の記録。
展覧会情報
展覧会名
柚木沙弥郎 永遠のいま
開催期間
2025年10月24日[金]─ 12月21日[日]
開館時間
11:00 ─ 19:00(入場は18:30まで)
休館日
月曜日(ただし11月3日、11月24日は開館)
月曜祝休日の翌火曜日(11月4日、11月25日)
会場
東京オペラシティ アートギャラリー
Webサイト
https://www.operacity.jp/ag/exh291/





















