高木由利子「Threads of Beauty」|黒の奥で、人が息をしていた — Bunkamura最後の展示室

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渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催されている、
高木由利子 の写真展「Threads of Beauty 1995–2025」を見てきました。

展示室は暗く、壁や配管がむき出しのまま残されています。
作品の前に立っていると、写真の黒の奥から、人の気配がゆっくりと浮かび上がってくるようでした。

土地とともに生きてきた人々。
その時間をまとった布や服。
色のない写真なのに、風や声、土の匂いまで伝わってくるような感覚があります。

そしてこの展覧会は、Bunkamuraザ・ミュージアムの現展示室で行われる最後の展示でもあります。
約40年にわたり多くの作品が展示されてきたこの空間で、最後にこの写真を見ることになったのも、どこか象徴的に感じられました。

黒の奥に映っていたのは、人が生きてきた時間と、その土地で生まれた装いでした。

高木由利子 写真展
Threads of Beauty 1995‐2025 ― 時をまとい、風をまとう。
目次

黒の写真の奥に、人の気配がある

会場に入ると、まず写真の黒に引き込まれます。

ただの暗さではなく、奥行きのある黒。
そこに人の顔や衣服、身体の線がゆっくりと浮かび上がってきます。

写真の中には、土地とともに暮らしてきた人々が写されています。
民族衣装を身につけた人々、風の中に立つ人物、布に包まれた身体。

モノクロームの写真なのに、そこには色の記憶がありました。
風の音や、土地の匂い、人々の声まで感じられるような気がします。

写真を見ているというより、
人の生きてきた時間の前に立っているような感覚でした。

布は土地から生まれる

展示の中で強く感じたのは、布と土地の関係でした。

その土地の素材で織られ、その土地の気候の中で生まれた布。
そして、その土地で暮らす人がそれをまとい、次の世代へと受け継いでいく。

高木由利子 はインタビューの中で、
民族衣装はある意味でオートクチュールのようなものだと語っています。

流行のために作られる服ではなく、
土地とともに生まれ、暮らしとともに形作られてきた服。

写真に写っている人々の装いは、
「服を選んでいる」というより、
その人の人生や土地そのものが現れているように感じられました。

私たちはいつの間にか、
「自分を探す前に服を探す」ようになっているのかもしれません。

しかし写真の中の人々は、
その土地で生き、その布をまとい、
まぎれもなく その人自身の姿としてそこに立っていました。

写真に写っていた、人の尊厳

展示の解説の中で、印象に残った言葉があります。

「大きな道ができると、少数民族はいなくなる」

文明が広がることで、土地に根ざした文化は少しずつ失われていきます。
服も、布も、暮らしも。

しかし写真は、その瞬間を残します。

そこには観光的な視線ではなく、
その土地に生きる人への敬意のようなものがありました。

写真の人物たちは、
「被写体」としてではなく、
自分の土地と時間をまとった 一人の人間として写っています。

だからこそ、その眼差しの奥に、
静かな尊厳のようなものが感じられるのかもしれません。

Bunkamura最後の展示室

Bunkamura

今回の展覧会は、Bunkamuraザ・ミュージアムの現展示室で行われる最後の展示です。

会場は思っていたよりも広く、
壁の配管や構造がそのまま見える場所もありました。

図録を手にしていたスタッフの方と、
「こんなに広かったんですね」と話したことも、
なぜか印象に残っています。

長いあいだ多くの作品が展示されてきたこの空間に、
最後にもう一度入ることができたこと。

その場所でこの写真を見ることができたことにも、
どこか小さな意味があるように感じました。

AIには奪えない、人間の喜び

展示の関連インタビューの中で、
高木由利子 は

「旅と撮影ほどのエクスタシーはほかにない」

と語っています。

知らない土地を歩き、人と出会い、
その瞬間にシャッターを切る。

その体験そのものが、
写真という表現の喜びなのかもしれません。

AIがどれほど進化しても、
人が土地を歩き、風を感じ、
誰かと出会いながら写真を撮るという体験は、
簡単には置き換えられないものだと思います。

黒の奥に写っていたのは、
写真の技術だけではなく、
人が旅をし、人と出会い、時間を重ねてきた痕跡でした。

展示を見終えたあと、図録を買おうか迷いました。
ただ、とても大きかったので、その場では持ち帰らず、
あとで通販で購入することにしました。

プリントも特殊な印刷で、
写真の黒がしっかりと再現されているそうです。

あの黒の奥にあった人の気配を、
もう一度ゆっくり見返してみたいと思っています。

またどこかで、作品や文章を通して出会えたらうれしいです。

展覧会情報

展覧会名
高木由利子 写真展
Threads of Beauty 1995‐2025 ― 時をまとい、風をまとう。

開催期間
2026/3/10(火)~ 3/29(日)

開館時間
13:00~20:00(最終入場19:30まで)

休館日
※会期中無休/入場無料

会場
Bunkamuraザ・ミュージアム

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