先日、六本木の森美術館で開催中の「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」を鑑賞してきました。27年ぶりの日本での個展であり、国内最大規模となるこの展覧会は心に深い印象を刻み込みました。ブルジョワの作品群を通して、人間の内なる葛藤と再生の物語を体験できた貴重な機会となりました。
展示の構成と印象的な作品
展覧会は3つの章で構成され、各章がブルジョワの人生と芸術の異なる側面を探求していました。
第1章「私を見捨てないで」
この章では、ブルジョワの生涯を通じて抱えた見捨てられる恐怖が表現されていました。最も印象的だったのは、巨大な蜘蛛の彫刻《かまえる蜘蛛》です。この作品は母性の相反する側面—保護と攻撃性—を見事に表現していました。
第2章「地獄から帰ってきたところ」
《罪人2番》
ここでは、父親に対する複雑な感情や心の不安定さがテーマとなっていました。《罪人2番》という作品が特に印象的でした。防火扉を再利用したこの構造体は、子供の罪の意識や罰の恐怖を象徴しており、親子関係の複雑さを鋭く表現していました。
《カップルIV》
第3章「青空の修復」
《青空の修復》
最後の章では傷ついた魂の修復と再生がテーマとなっていました。最も心を打たれたのは、この章の最後に展示されていた彫刻《トピアリーⅣ》です。木の形をした右足のない松葉杖を持つ人物像で、その右肩には傷があり、そこから青い実が生まれようとしている姿は、傷つきながらも生き抜く強さを象徴していました。
《トピアリーⅣ》
ブルジョワの芸術世界
ブルジョワの作品を通じて、不安、罪悪感、嫉妬、自殺衝動、殺意と敵意など、心の奥底にある様々な葛藤や否定的な感情が表現されていました。しかし、それらは単なる暗い感情の表出ではありません。ブルジョワはこれらの感情を昇華し、自己の再生を図ろうとする深い精神性を作品に込めていたのです。
「芸術は正気を保証する」
彼女の言葉、「芸術は正気を保証する」という言葉が、展示会場の壁に印字されていたのが印象的でした。ブルジョワにとって芸術制作は単なる美の追求ではなく、傷ついた魂がいかにして生き続けるかという問いへの答えだったのでしょうか。
「地獄から帰ってきたところ」という意味
《無題(地獄から帰ってきたところ)》
展覧会のタイトル「地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」は、ブルジョワの晩年の作品からの引用です。これは、彼女が自身を「サバイバー」と考えていたことを示しています。生きることへの強い意志を表現するその作品群は、私たちが直面する様々な「地獄」のような苦しみを克服するためのヒントを与えてくれるように感じました。
森美術館での開催の意義
《ママン》
森美術館がある六本木ヒルズの象徴的なパブリックアート《ママン》も、ブルジョワの作品です。この巨大な「蜘蛛」は、ブルジョワにとって母親を象徴するモチーフでした。本展では、いわば彼女の自画像ともいえる「蜘蛛」をモチーフとした様々な作品が登場し、ブルジョワの芸術世界をより深く理解する機会となりました。
展覧会を通じての気づき
《蜘蛛》
この展覧会を通じて、私はアートの持つ力を再認識しました。ブルジョワは、自身の苦しみや不安を完全に解消することはできないと認識しながらも、それらと向き合い続け、芸術として昇華させることで98歳まで創作活動を続けました。
彼女の作品は、私たちに「生きること」の意味を問いかけています。過去のトラウマや現在の苦しみと向き合い、それを表現することで、私たちも自身の「地獄」から帰還し、魂の再生を果たすことができるのかもしれません。
《意識と無意識》
ルイーズ・ブルジョワ展は、単なる美術展覧会を超えて、人間の魂の旅路を体験する場となっていました。この展覧会を通じて、私は芸術の持つ力、そして人間の強さと脆さを改めて感じることができました。皆さんもぜひ、この魂の旅路に触れてみてください。
I feel that if we are able to sublimate, in any way we do, that we should feel thankful.
I cannot talk about any other profession, but the artist is blessed with this power.
Louise Bourgeois
もし昇華できるのなら それがどんなやり方であっても ありがたいと思うべきだと思う。
ほかの職業のことは話せないが、芸術家はその力に恵まれている。
ルイーズ・ブルジョワ
展覧会情報
展覧会名
ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ
開催期間
2024.9.25(水)~ 2025.1.19(日)
開館時間
10:00~22:00
※火曜日のみ17:00まで
※ただし、2024.9.27(金)・9.28(土)は23:00まで、10.23(水)は17:00まで、12.24(火)・12.31(火)は22:00まで
※最終入館は閉館時間の30分前まで
休館日
会期中無休
会場
森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
展示会公式サイト
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/bourgeois/index.html
地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ
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