“自由に描けない”あなたへ。迷ったときに試したい3つの実験

「自由に描いていいよ」と言われたとき、あなたはどう感じるだろう。
もしかしたら、軽やかさよりも、戸惑いや不安を感じるかもしれない。

自由という言葉に、足がすくむとき

テーマのないコンペ。個展の準備期間。
締切も誰からの依頼もない、ただの「時間」。
そんなとき、筆が止まることがある。

「何を描けばいいかわからない」
「また同じような絵になってしまいそう」
「何か違うものをやらなきゃ」

自由であるはずの状況が、かえって自分を縛ってくる。
それはきっと、絵と真剣に向き合っている証拠なのだと思う。

わたしを縛っていた“ルール”

「また同じものを描いてもなあ」
そんなふうに思ったことがある。

気を衒てらいたいわけじゃないのに、「違うものを出さなきゃ」と思ってしまう。
いつの間にか、「自由」という言葉が「期待に応えなければ」というプレッシャーに変わっていた。

それでも心の奥底では、本当はもっと自分に素直な絵を描きたいと、ずっと思っていた。

試してみた、3つの“自由の実験”

自由に描けない時期を通ってきたからこそ、
私が試してみて「ほんの少し呼吸がしやすくなった」と感じた、
3つの実験をご紹介したい。

1｜目に止まったものを描いてみる

何を描こうか考え込むのではなく、
目に入ったもの、気になったものをスケッチしてみる。

それがたとえ「意味のない」ものに思えても、
“気になった”という自分の感覚を信じてみる。

2｜心の矢印が向くほうへ行く

コンペや展示、誰かの目を意識しなくていい場所へ一度退いてみる。
その時の自分が見たい展示に足を運んでみる。
小さな画集を開いて、昔憧れていたアーティストの絵を見てみる。

“外の評価”ではなく、“内なる感覚”を再起動させる時間。

3｜好きだったものを、もう一度

音楽、映画、絵、言葉──
昔夢中になったものを思い出してみる。

それはきっと、「描きたいもの」に向かう入口になる。
無理に“自由”を目指さなくても、“好き”が導いてくれる道がある。

自分にかけた問いかけ

「受け入れられたい」と思う自分がいる。
「誰にも否定されたくない」と願う自分もいる。
その両方を認めた上で、自分にこう問いかけてみる。

誰からも評価されなかったとして、
軽蔑も称賛もなかったとして、
それでも描きたいものはなんですか？

答えがすぐに出なくてもいい。
その問いが心にあれば、描けない時間にも意味が宿る。

「自由に描く」とは、楽で軽やかなことではない。
むしろ、そこには迷いや痛みも含まれている。

でも、その中で「何を選ぶか」は、あなたの手に委ねられている。
誰かのためでも、誰かに見せるためでもなく、
あなたが「自分で選びたい」と願ったとき、
その瞬間から「自由」は始まっているのだと思う。

あなたの筆が、また動き出す日まで

息を吸うように描けない日があっても大丈夫。
不安も、迷いも、全部含んで。
描けない時間さえも、きっとあなたの絵になる。