わたしは読書をしない。
知識をつけた方が良いとか、教養を身につけた方が良いだとか。
そのために本を読めと“他人(ひと)”は言う。
そんなもの、本が嫌いな人間が読んだって意味がない。
わたしは文字を読みたくたい。
まったく頭に入らないし、何も浮かんでこない。
わたしの人生に読書は必要のないものだ。
譜面台に楽譜を載せる。
音符は違う。
文字とはまったく違う。
作曲家が書いたメロディーが物語のように情景を浮かび上がらせる。
そのメロディーに描かれた世界に入り込みうっとりとする。
わたしはブラームスやベートーヴェンたちが残した物語を奏でる。
彼らは時に寡黙、時に雄弁に語る。
わたしは譜面に耳を傾け、演奏で想いを伝える。
今日は大晦日だ。
今年はどんな年だった?
喜びも悲しみも、出会いも別れもたくさんあった。
一年の締めくくりにはあの曲しかない。
この小さな部屋から歓喜の歌を。
そしてまた明日から新しい一年が流れる。